こんなに怖い腎臓病の影響
腎臓は左右一対二個ある臓器のためか、肝臓などと比べても労わられていないものといえます。腎臓が二個あることだけでなく、腎臓の機能が血液をろ過して余剰な水分と老廃物を尿として排泄することであるというのも腎臓が軽くみられている理由とも言えます。
しかし、腎臓に病気が起こるとさまざまな形で健康被害が発生するのです。
排尿できなくなると命に関わる
腎臓によって生成される尿は、血液から余分な水分と一緒に濾過したアンモニア・尿素などの老廃物を含んでいます。アンモニアや尿素はたんぱく質の分解・代謝の過程で発生するものですが、人体には有害で肝臓疾患の原因にもなってしまうのです。
腎臓病を患い腎機能が低下すると、それに伴い排尿量も減少します。場合によっては排尿自体が全くできなくなってしまうことさえあります。
排尿が出来なくなることで「トイレに頻繁にいかなくていい」と感じる人もいるかもしれません。しかし、排尿が全く出来ないということは命取りになる可能性が大きいのです。
まず、アンモニアなどの老廃物が排除できなくなるため肝性脳症などのアンモニアが原因となる病気が起こりやすくなります。
そして余分な水分を排泄できなくなるため血液量が増加して、心不全を起こす危険性が高まるのです。「血液の量が多ければ多いほど健康」と考える人も少なくないかもしれませんが、血液量が増えるということは血液を送り出す心臓の負担が増すということでもあります。
腎臓病は腰痛の原因にもなる
腰に痛みが来る腰痛は、強くなくても痛みが来る頻度が多ければそれだけで辛いものになります。腰痛が続けば激しい運動はおろか歩行さえも厳しくなるし、荷物を担ぎ上げることなど到底不可能になってしまいます。
腎臓に雑菌が感染する腎盂腎炎などの腎臓病を患うと、慢性的な腰痛が症状としてあらわれます。腎臓病が原因となっている腰痛は、痛みの元が内側にあるためマッサージや湿布では治らない性質を持っています。
逆に言えば慢性的な腰痛に悩まされていても、職業病や加齢が原因だと思っていると腎臓病を見逃してしまう可能性があるということなのです。
腎不全になると骨が弱くなる
歳を重ねるごとに身体のあちこちが弱くなっていくのは仕方のないことですが、腎臓病も身体を弱くする一因となるのです。
腎臓にはカルシウムの吸収を助ける活性型ビタミンDを生成する働きがあり、腎臓が健康な人は歳を重ねても骨が丈夫でいられます。逆に腎臓の機能が低下すると活性型ビタミンDの生成が少なくなり、カルシウムの吸収に影響を及ぼしてしまいます。
加齢によって起こる老化は、骨からのカルシウム流出を加速させてしまいます。しっかりとカルシウムを摂取できていれば歳をとっても丈夫な骨は維持できるのですが、腎臓病を患っているとカルシウムの吸収が阻害され、骨が一層弱くなってしまうのです。
血中電解質の調整が出来なくなる
運動で汗を掻いた後は必ず水分だけでなく塩などで電解質も補給しなければならないのはもはや常識といえます。電解質を補給せずに水だけを飲んでいると水中毒を起こしてしまい、命に関わってしまうことになるからです。
体内の電解質の量は汗や排尿によって調整されているのですが、腎臓病で排尿に支障をきたすと電解質バランスが大きく崩れてしまいます。電解質は身体を健康に保つためには必要不可欠なミネラルですが、必要以上に多いと逆に健康を崩す原因になってしまうのです。
腎臓病で腎機能が低下して電解質バランスが崩れると、高カリウム血症を引き起こす恐れがあります。
高カリウム血症は血液中のカリウム濃度が著しく高くなることで起こる電解質代謝異常症で、身体を強く打った時や長時間圧迫された時に起こる挫滅症候群(クラッシュ・シンドローム)で発生することがあります。
高カリウム血症を起こすと手足のしびれや吐き気、筋力の低下、不整脈などを発症し、最悪の場合致死性不整脈を起こして心停止してしまいます。
高カリウム血症を起こした場合、ただちに人工透析を行わなければ命に関わってしまうため、腎臓病は決して侮ってはいけないのです。