内臓ひとつ失っても平気でした。胆のう摘出体験談~入院から退院まで|内臓疾患ファイル

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2015年7月22日
内臓ひとつ失っても平気でした。胆のう摘出体験談~入院から退院まで

胆石が3つできてしまったので、胆のうを全摘出手術してきました。手術なんて初めてで怖かったけど、終わってみると案外なんでもありませんでした。今回は入院から手術、退院までのお話と、退院後受けた注意点についてお話しします。

WEBライター
  
病院

胆のうって全摘出しても大丈夫なの?

胆のうの役割は、肝臓で作り出した胆汁をためておく保管場所です。肝臓さえ残っていれば「胆汁を作り出すこと」自体には全く不自由はありません。さらに「たいていの臓器は、失っても別の臓器がその役割を代わりに担うようにできているので、大丈夫」なのです。

例えば胃袋を全摘出したとしても、消化能力は落ちますが、全く消化できなくなるわけではありません。食道の一部が、胃の代理としての役割を果たすように変化してくるのだそうです。私のケースも同じように「だんだんと体が順応して、いずれ好きなものを好きなだけ食べられる体になる」とのことでした。

ただし、摘出手術の直後からしばらくの間は「油」や「消化の悪い食べ物」などが苦手になります。そのため、一定期間は「術後メニュー」が必要となりました。 CT

治療方針と入院中の生活について

私の治療方針は2通り。

・胆管に詰まっている胆石は、胃カメラでつまみ出す。
・胆のう内にある胆石は、胆のうそのものを全摘出することで対応する。

さらに、治療スケジュールには、CT検査・MRI検査・大腸カメラ検査なども含まれました。「体の不調の原因は本当に胆石『だけ』なのか」「他に異常のある部位はないのか」を調べるためです。

胃カメラ

胃カメラの先には、カメラだけではなくさまざまな医療器具が取り付けられています。これにより、体内の様子を見るだけではなく、胃カメラを使った治療ができるのです。この胃カメラによる措置が行われるまでの間、私はずっと絶食状態で、点滴のみによる栄養補給が続きました。

それには「胃カメラ検査を受ける前日には、食事を抜く」ことはもちろん、「食事をとることで胆のうが動いて、胆石の痛みが発生する」といった理由もあったのです。

CT検査

大きな機械に乗せられて、私はただ横たわっているだけ。点滴の管からCT検査用の液「造影剤」が投与されました。検査の前には「少し熱くなります」という説明を受けています。しかし私は「せいぜい、ほてる程度だろう」と、たかをくくっていました。いざ液を入れられてみると、本当に熱い!体の内側からカーッと熱が湧き出てきました。

特に驚いたのが、恥ずかしいお話ですが股間の辺りの熱です。まるでおもらしをしてしまったかのような錯覚を感じました。そのリアリティは、検査が終わった後にも、股の辺りが塗れていないかどうか、何度も確認をしてしまうほどです。なお、造影剤の副作用には、じんましんが出る可能性もあります。

MRI検査

CT検査よりもさらに大げさな機械に横たえられて検査を受けました。検査機械の作動音はとても大きいので、密封性の高いヘッドホンで音楽を聞かされます。私がお世話になった病院ではクラシック音楽のようなものを流していました。病院によっては、患者が好きなCDを持ち込んで聞ける場合もあるそうです。

検査中は完全にトンネルのような空間に閉じ込められます。閉所恐怖症でなくても、パニックを起こしてしまったり、不安で気分が悪くなってしまうケースもあるそうです。ヘッドホンで音楽を流されていても聞こえてくるほどの大きな作動音も影響するのかもしれません。

そのため「何かあったらすぐに合図をするように」と手元にスイッチを握らされたのです。私は、特に気分が悪くなるということもなく、検査中「UFOにさらわれて調査される体験ってこんな感じかなあ?」などとのんきに想像していました。

大腸カメラ検査

胃カメラと同じく、大腸カメラも腸に内容物があると検査はできません。検査前日までは離乳食メニュー、そして前日からは下剤が出されました。「どんな格好でするの?」「M字開脚?」「それとも四つんばい?」頭のなかは不安でいっぱい。

実際には、横向きの姿勢での検査でした。「睡眠薬で眠っている間に終わる」という説明を受けていました。しかし、睡眠薬が完全に効き始める前に検査が始まり、少しだけ痛い思いをしたのです。事前の下剤を飲む段階で苦労をして、予定より大幅に遅れてしまったためかもしれません。

呼吸訓練

全身麻酔の副作用・後遺症として「タンがからみやすくなる」「呼吸困難に陥りやすくなる」といった可能性があるとのこと。それを回避するため、手術の前には、呼吸訓練がありました。専用の器具を貸し出され、数日かけてじっくりと呼吸の訓練。

パイプ状のプラスチック容器の中にボールが入っていて、ホースから息を吸い込む力でボールを浮かせる、一見おもちゃのような器具です。4段階までのボールがあり、浮きやすさは呼吸の強さによって変わります。

一番浮きやすい1段階目のボールが十分に浮くようになれば、問題なく手術を実施できるそうです。私は、3段階目・4段階目はビクともしませんでしたが、2段階目のボールを浮かせられる所までは進みました。

胆のう全摘出手術

おなかを切り開くのではなく、小さな穴をあけて手術器具を差し込んで行う「腹腔鏡(ふくくうきょう)手術」でした。お医者さんからの事前の説明では「もしも、いざ内部を器具のカメラで見て、腹腔鏡で対応できない状態であった場合、開腹手術に変更する可能性もある」とのこと。

開腹手術の可能性におびえながらも、手術室へは徒歩で向かいました。そして麻酔が効き始めるまでの間、必死に目を見開いてお医者さんを見つめ「まだ意識があります」と猛アピール。大腸検査のとき「睡眠薬が効いて眠っている間に終わる」と聞かされていたのに、眠る前に開始されて痛い思いをしたことがトラウマとなっていたためです。

そして、少しめまいを感じました。「麻酔が効いてきたのかな?」と思いつつも「意識を失うまではアピールを続けなければ!」とがんばっていた、つもりでした。次の瞬間、お医者さんに肩をトントンとたたかれ「大丈夫ですか?」と尋ねられました。

私はてっきり「これから手術を開始するが大丈夫か」という意味だと思ったのですが・・・。「手術は終わりましたよ」と言われて仰天。いつ意識を失ったのか全くわかりませんでした。「やはり全身麻酔は格が違った!」と謎の感動がありました。

歩行訓練

大げさに「訓練」などというほど、歩行が困難になるような手術ではありません。腹腔鏡手術は体へのダメージが小さく、手術痕は2cmほどの傷がひとつ、5mmほどの傷がふたつです。傷は縫い合わせるのではなく、医療テープでとめられているのみの簡単な措置。

手術当日は安静状態でしたが、翌日には立って歩いても良いと言われました。

むしろ、積極的に歩いて筋肉を動かしたほうが、傷の治りが早いのだそうです。入院中の運動不足が気になっていたので、退院までの間はせっせと歩きました。

点滴

入院中つらかったこと

検査や検査の準備など、さまざまな要因が私を苦しめました。入院中、私がつらかったことをお話しします。

点滴がなかなか入らない血管

私は血管が細いらしく、看護師さん泣かせでした。まず、なかなか点滴がうまく入る場所が見つかりません。そして、2~3回針を刺して失敗、別の場所を探してまた刺して、の繰り返し。腕はあちこち内出血だらけです。

入院生活の後半では、点滴が必要なくなっても針を抜かずに管にフタをして過ごしました。「この患者は点滴針を刺す場所を見つけにくい」と認識が定着、一度成功した針を維持しようとしていたのかもしれません。

しかし一度は成功した針も、点滴を通さない時間が続いた後は、再開しようとしたときに液が入らなくなっています。なんとか液を通そうと圧をかけられるのですが、これがまた痛い。結局、点滴針を維持していた期間は不自由な思いをし、点滴を再開しようとしたときには痛い思いをし、それでも液が入らずに、また何度も針を刺されるという結果になりました。

血管痛の強い輸液

点滴にはいくつかの種類がありましたが、最も多く使われたのが「ビーフリード輸液」。これは栄養補給を目的とした輸液で、絶食期間の大切な糧です。この点滴がとにかく痛い。「そりゃ、針を指してるんだから多少は痛いでしょう?」と思われるかもしれません。でも、この点滴の痛みは、針を刺された痛みではないのです。

看護師さんによると「ビーフリード輸液は特に副作用としての痛みが強い」とのこと。「血管痛」というそうです。針が刺さっている部分だけではなく、腕の全体に痛みがありました。衣服が触れるだけでも痛い、腕の角度を変えるだけでも痛い、腕を動かそうとするだけでも、とにかく痛い。

あまりに痛みがひどいときには、痛み止めが処方されました。しかし、それも多用するわけにはいかないようです。

痛みで夜も眠れないときには、眠りにつくまではマイルドな輸液に交換してもらえました。ただ、栄養価で判断するとビーフリード輸液が最も私に適していたらしく、ずっとマイルドな輸液を使うわけにはいかなかったようで・・・。

私が眠りについたのを見計らって、看護師さんがこっそりと輸液をビーフリード輸液に交換。そして、夜中にまた痛みで目が覚める、といったこともありました。

飲めない下剤

大腸検査の前に出された下剤は2種類。下剤と聞いて私はピンクの小粒のような錠剤を想像していたのですが、どちらも液体でした。前日の夜に出たのはとてつもなく酸っぱい下剤。そして、当日の朝にはかすかな塩味プラス酸味で、なんともいえないマズさの下剤です。こちらは、一緒に吐き気止めを出されました。

あまりのマズさに吐き気をもよおす人が多いのかもしれません。マズい下剤は2リットルもの量を2時間ほどかけて飲みきるよう指示されました。しかし私は、朝から飲み始めて、検査の予定時間までに飲みきることができなかったのです。時間は押しに押して、予定していた時刻を過ぎてもやっと半分の1リットルを飲み終わったというところ。

「下剤を飲みきることができなければ、お尻にホースを突っ込んでお湯を流し込みます」と前日に予告されていました。そしてとうとう「羞恥心」と「マズい下剤を飲み干す苦痛」をはかりにかけて、私は、お尻ホースのコースを選択したのです。

眠れない夜

昼間、検査がなければ何もすることがなく、ついついウトウトしてしまいます。そうして昼間に眠ってしまうと、夜に眠れなくなってしまうことは当然ですよね。さらに、夜眠れていないので、次の日の昼はまた眠くなってウトウト、という悪循環に陥ります。

深夜はテレビを見るわけにもいかず、運動不足解消のために病棟内を散歩していました。ちなみに、ちょっとだけ期待していたのですが、霊体験などはありませんでした。

眠れない術後

手術が終わって麻酔から覚めた後、なんだかとても眠かったのですが眠らせてもらえません。ウトウトと眠りかけると、お医者さんに肩をトントンとたたかれ、起こされてしまうのです。「麻酔からきちんと覚めるかどうか」「自力での呼吸ができるかどうか」など、不確定要素があるためでしょうか? ダイエット

入院中・入院後感じた幸せ

つらかったことばかりではありません。入院中感じた、ささやかな幸せなどについてお話しします。

食事

絶食の後に出た食事は、たとえ米粒ひとつ残らず煮崩したヤマトのりのようなおかゆであっても、最高のごちそうでした。おかゆプラスおかずというメニューのときには、おかゆには全く味がつけられていません。

しかし、大腸検査の前に食事が離乳食メニューとなったときは、おかずナシのかわりに、おかゆがおかずの煮汁で煮込んだ雑炊のようなもの。しっかりとした味付けで、普段のおかゆよりもおいしく感じました。さらに、離乳食メニューのときにはおやつまで出たんです。おかずがない分、食事だけでは1日の必要栄養量に届かないとのこと。

入院中は、絶食期間など、食に関してはつらい思いをすることも多々ありました。しかし、だからこそちょっとしたことに幸せを見いだすことができた、ともいえます。

ゆったりとした時間

病院に仕事を持ち込むことができなかったので、弟が携帯ゲーム機を貸してくれました。検査と治療以外の時間は、ただただ寝るかテレビを見るかゲームをするか。自宅にいるときには、あまりテレビをじっくりと見ることもなかった私です。

しかし入院中は、ワイドショーなども新鮮な気持ちで見ていました。食事の支度をしなくても時間になれば出てくる、定期的にお茶が配られる、毎日キレイにお部屋の掃除とベッドメイク、と、上げ膳据え膳状態でゆっくりと体を休めることができたのです。

優しい看護師さん

看護師さんは皆とても優しいのですが、ひときわ人懐っこい方がいました。年齢が近く、なにかとよく話しかけてくれたのです。私は人見知りをするほうなので、疑問や不安などがあっても、改めて聞くことにはエネルギーを消費します。しかし、よく会話する時間を持ってくれる方がいるおかげで、気兼ねなく何でも聞けました。

ダイエット効果

特にやせる努力をしたわけではありません。それなのに、胆のうを摘出して以来、少しずつ体重が減りました。なんと、1年で10kg近く落ちたのです。がまんをするわけではなく、自然とおやつを食べたい気持ちも薄れました。「自分のおなかで消化しにくいものだ」という意識のせいかもしれません。食べ物の好みが健康的になったような気がします。

便秘改善

今になって振り返ると「手術前は、便秘気味だったのかもしれない」と思います。あまり自覚はしていませんでした。退院後、明らかにお通じが良くなったことで、初めて気がついたのです。 おかゆ

退院後の食事

退院後は、1カ月間ほどは食事についてお医者さんから指示がありました。1カ月を過ぎたら、好きなものを好きなように食べて良いとのこと。ただし、あまりハメを外し過ぎないように、とのことでしたが。1カ月間気をつけるよう言われたのは以下の項目です。

食べる量

一度に大量の食べ物を消化することが困難になっているため、ゆっくりとよくかんで、少量ずつの食事を心がけましょう。

食材の選別

消化しにくいものは避けなければいけません。その際、具体的に避けるべき食材をリストアップされたのですが、そこには意外な食品も含まれていたのです。

消化の良い食べ物

・おかゆ
・そうめん
・白身魚
・豆腐
・脂肪の少ないお肉
・りんご
・バナナ
・桃
・ヨーグルト

消化の悪い食べ物

・玄米
・雑穀米
・ラーメン
・そば
・パスタ
・バラ肉
・ロース
・ソーセージ
・ベーコン
・ごぼう
・れんこん
・こんにゃく
・柿
・パイナップル
・柑橘(かんきつ)類
・あんこ
・チョコレート

私が意外に感じたのは、ごぼう、れんこんなど。健康的な食材のように思えますが、繊維の多い野菜類は消化に苦労するようです。また、こんにゃくなどもヘルシーな食材のイメージがあったので、意外でした。「楽に消化できるかどうか」という視点で見ると、普段「ヘルシーである」と思っている食材でも、意外とNGとなるものが出てくるようです。

調理法

揚げ物はもちろん、いため物も油を使うのでNG。煮る・蒸すといった調理法がオススメです。

どんな野菜でも、できるだけ火を通して柔らかくすることが大切。そのため、上記「消化の悪い食べ物」としてあがっていない食材であっても、生野菜サラダとして食べたり、火を通さずに調理する漬物などはあまり推奨されません。

味付け

薄味を心がける必要があります。栄養士の先生に、塩分を多く取らなくても、だしをしっかりと取ればおいしくいただけると教わりました。病院で出る食事もすべて薄味に仕上げられていましたが、確かにだしが効いていておいしかった覚えがあります。

それまで私は、調味料の味がする料理ばかりを作っていましたが、入院して初めて「素材の味をいかす調理」を知った思いです。

禁酒

胆のうを取ってからしばらくは、アルコールを分解しにくくなります。私はもともとお酒を飲まない人間でしたから、特に苦労することもありませんでした。

「何でもない日常」のありがたみ

手術をしなければいけないと聞いたときには不安でいっぱい。実際に手術が終わってみるまでは、ずっと不安は付きまといました。でも、いざ終わってのど元を過ぎてしまうと、良い思い出のようにさえ感じています。

現在体調が悪いな、と感じている方のなかにも、以前の私のように「おおごとになったら怖いから病院には行きたくない」と思っている方もいるかもしれません。しかし、もし異常があるのなら、発覚するかしないかに関わらず、それは確実にあなたの体をむしばんでいるのです。

本当に怖いのは「大病を知ること」ではなく「知らずに放置して悪化させること」のはずですよね。

「医療費が高くついてしまうのでは?」という不安もあるかもしれません。ですが、いざ高額の医療費がかかるという事態になれば、病院はきちんと相談に乗ってくれます。支払いが困難な場合には、分割払いに応じてくれる病院も多くあるのです。

入院や手術など、そんな機会なく健康に過ごすことが一番ではあります。でも、入院生活は悪いことばかりではありませんでした。なにより「なんでもない日常」のありがたみを知る良い機会となったのです。皆さんも、体調の変化から目をそらさずに、体を大切にしてくださいね。

著者:山田直実

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2年程WEBライターの活動してまいりました。ライターになる以前はFLASHゲームを作るお仕事をしておりました。どうぞよろしくお願いいたします。WEBライターとしての経験をいかしてWEBライティング専用のエディターを作って公開しております。こちらのURLからご覧下さいませ。http://writing-san.blog.jp/