我慢が死につながる盲腸(虫垂炎)の怖さ
虫垂炎、いわゆる盲腸は肛門から一番遠い大腸の端っこに引っ付いている虫垂が炎症を起こす病気です。盲腸を起こすと刺し込むような痛みが続き、その痛みは日常生活を送るのが困難になるほどです。
しかし、周りから見れば原因がなんであれ「ただの腹痛」にしか見えないため、「それぐらい我慢しろ」「トイレに行け」とにべもないことを言われてしまうことがせいぜいです。
しかし、盲腸は放っておくと命取りになることさえある恐ろしい病気なのです。
盲腸とはどんな病気か
盲腸は、しぼんだ風船のような、虫垂と呼ばれる大腸の端っこで起こる病気です。虫垂には多くのリンパ節が通っており、免疫機構としてとして大きな役割を果たしていることが分かってきました。
虫垂には多くの細菌が生息しており、腸内の細菌環境に大きく貢献する役割を持っています。特に腸内を整える善玉菌は虫垂に多く生息しており、腸内の健康にはなくてはならないものなのです。
そんな虫垂に細菌が侵入して増殖を繰りかえすと、炎症が起こってしまい虫垂炎になってしまうのです。虫垂炎の症状はみぞおちから右わき腹に掛けての痛みで、食欲不振や発熱・嘔吐などの症状が現れる場合もあります。
基本的に右わき腹の痛みが愁訴となるため、周囲からはあまり深刻な病気であるように思われないのが盲腸の難点です。
進行すれば腹膜炎になる
昔は「盲腸はお腹が痛いだけだからたいしたことはないだろう」と思われていたものですが、治療せずに放置しておくと炎症で発生した膿や腸液が外側に漏れ出してしまい、腹膜炎を起こしてしまいます。
内臓が収められている腹腔内は腹膜という組織に覆われているのですが、腹膜自体は物凄くデリケートで雑菌が侵入するとすぐ炎症を起こしてしまうほどです。
腹膜炎が進行すると、雑菌の出す毒素が血液を通して身体に回る敗血症を引き起こし、ショック症状から死に至ってしまうことさえあります。
盲腸を腹膜炎までこじらせることは最近は少なくなったものの、妊婦や力士などのお腹が大きくなっている人は虫垂の位置が移動してしまい、正確な診断が出来ないことがあるため、重症化してしまうケースが見られます。
盲腸の治療
俗に「盲腸は切った後でおならが出るようになれば全快」と言われるように、虫垂を手術で切除するのが一般的な治療法でした。
しかし、最近は前述したような虫垂の役割も分かってきたため、大体の場合は抗菌薬を投与する薬剤療法で治してしまうのが一般的になっています。
一昔前までは盲腸の診断が難しく、開腹手術で虫垂を取ってしまった方が手っ取り早かったものの、CTスキャンなどの検査機械が発達したことによって薬剤療法で悪化する前に治すことが可能になったのです。
盲腸の治療では絶食が大前提となります。物を食べると腹圧が上がってしまい治りが遅くなるためです。食事の代わりに点滴でカロリー補給を行います。