日本人の10人に1人は過敏性腸症候群!?
何だか最近便通がおかしいと感じたら、過敏性腸症候群のせいかもしれません。
過敏性腸症候群は、IBSの通称でも知られている腸の病気です。病気といっても、病院での検査で目に見える異常が見つかるような類のものではありません。
ストレスが大きく関係している現代病であり、日本においては10人に1人が罹っていると言われています。罹患率は高いのですが、有効な治療方法がある病気ですから、「お腹が弱いのは生まれつきの体質」などと諦めずに解決に結びつけるべく知識を深めておきましょう。
4つ全てに当てはまったら、消化器科を受診しよう
腸の病気には色々な種類があり、症状が酷似しているものも多数あります。
したがって素人が区別をつけるのは難しいですが、下記の4つ全てに当てはまっていた場合は、過敏性腸症候群の疑いが強いですから一度消化器科を受診してみましょう。
- 腹痛などのお腹の不調が、1ヶ月に2回以上ある
- トイレで用を足せば症状が治まる
- 腹痛などのお腹の不調に伴い、便の硬さやトイレの回数が変動する
- 上記3つの症状が表れるようになったのは、50歳以下である
慢性下痢型、便秘型、混合型の3タイプがある
過敏性腸症候群は、表れる症状によって3つのタイプに分類されています。
慢性下痢型
わずかな不安や緊張を感じただけで、下痢をしてしまう
便秘型
ウサギの糞のような、硬くて玉状の便しか出ない
混合型
不定期に下痢と便秘を繰り返す
慢性下痢型は男性に、便秘型は女性に多い傾向があります。
なかには下痢が頻繁に起こりすぎて、朝の出勤時にトイレから出られなくなるような重症の人もいます。
ストレス信号によるセロトニンの過剰分泌が原因
今まで発症の原因は、腸の機能をコントロールしている自律神経の異常と考えられていました。
しかし近年では、神経伝達物質のセロトニンが引き起こしているという説が有力視されています。
脳がストレスを感じると、その信号は腸へと伝わっていき、腸の粘膜からセロトニンが生じます。
セロトニンはセロトニン受容体と結びつき、腸の消化活動に影響を与えます。
過敏性腸症候群の場合、ストレス信号の発信が過剰なため、セロトニンが必要以上にたくさん分泌されてしまいます。その結果、下痢などの便通障害を引き起こすのです。
セロトニン3受容体拮抗薬は、慢性下痢型に効果的
一度下痢や便秘に襲われると、再発したらどうしようという不安に苛まれます。
それがストレスとなり、ストレスのせいでまたセロトニンが過剰分泌されて…という悪循環に陥ってしまいます。病気を治すためには、この悪循環を断ち切らなくてはいけません。
治療の中心となるのは、薬物療法です。治療に用いられる薬には多種ありますが、そのうちの1つにセロトニン3受容体拮抗薬というものがあります。この薬には、腸内のセロトニンの働きを抑制する作用があり、慢性下痢型に効果的な薬として、大きな期待が寄せられています。
他にも症状に合わせて、高分子重合体、消化管運動調整薬、乳酸菌製剤、下剤、抗コリン薬などの薬が処方されます。薬物療法だけでなく、食事療法や運動療法も平行して行うことで改善を促します。
過敏性腸症候群を自力で治すことはたいへん困難ですから、必ず病院で適切な治療薬や治療法を処方してもらいましょう。