ボロボロと崩壊していく膵臓の細胞
昔から、酒は『百薬の長』といわれています。それにゆえに、毎日少量飲むなら健康に寄与します。
しかし、そこに胡座をかいて、我を忘れる程毎日飲んでいたらどうなるでしょうか?いくら百薬の長といえども、体に害を被る事は明らかです。
そして、その代償は確実に体に蓄積されていきますので、いつかは限界値を越え病気となって牙をむくでしょう。
昨今、有名人が『膵炎』を発症させ入院したというニュースがありました。この原因となったのが、アルコールの乱用・多飲です。お酒好きの人は耳を塞ぎたくなるような事実ですが、アルコールにより膵臓細胞が確実に崩壊していったのです。
アルコールは良いとされていても、度を過ぎた摂取によって膵臓が悲鳴をあげたのです。
健康な膵臓が二度と戻ってこない慢性膵炎
先程の有名人の話は『急性膵炎』ですが、毎日のように膵臓が炎症を起こす膵炎もあります。『慢性膵炎』というものです。
この慢性膵炎も原因の大半は、アルコールの継続的な乱用・多飲です。近年では女性の罹患者数が増加している傾向にあります。男女関係なくアルコールを飲む機会や場所が増えたからでしょう。
この慢性膵炎にかかってしまうと、膵臓は継続的な炎症をおこします。それゆえに、膵臓細胞がどんどん破壊され、内臓組織を構成する結合組織が異常なまでに増殖する線維化がすすみ柔軟性を失います。
硬くなってしまった膵臓は、膵臓としての機能を保てなくなるのです。
アルコールの乱用・多飲により崩壊した膵臓は、健康なものとして二度と戻ってこないのです。
5つの方法で対処する慢性膵炎
慢性膵炎によって崩壊した膵臓は二度と戻って来ません。でも、崩壊の進行を抑える事は十分できます。どうすれば良いでしょうか?
症状を知る
どんな病気でも始まりは存在しています。それは慢性膵炎でも同じです。慢性膵炎の場合は、腹痛や吐き気が初期症状として現れます。それに伴って倦怠感が全身を襲います。さらに膵臓細胞の崩壊が進んでいくと、疼痛、体重減少、下痢、脂肪便(油っこい便)、上腹部の痛み、腰背部の痛み、多尿、口の渇きが見られます。
これらの症状が見られたら、病院で診察を受けられると良いでしょう。
注意点
膵炎は進行すると、膵臓の機能が著しく低下し痛みすら感じなくなります。治癒したと勘違いしやすいので注意が必要です。
食事療法
慢性膵炎になると、食事の制限が必要になってきます。当然のことながら、原因を作ったアルコールは禁止になります。さらに、刺激の強い物やコーヒー、過食を避けなければなりません。時には、1回の食事で摂取する量を減らし数回に分けるという方法をとることもあります。
薬物投与
膵炎によってボロボロになった膵臓は治りませんが、投薬する事で痛みを和らげたり、膵液の分泌をコントロールする事は可能です。それぞれの症状に見合った薬を処方されると思うので、正しく飲まれてください。
禁煙
まだ研究段階ですが、リスクファクターとして喫煙をあげる医師は少なくありません。『Archives of Internal Medicine』3月23日号には、『喫煙をすることで膵炎の増大に関係がある。』という発表が掲載されています。膵炎になったら、アルコールの禁止と並行して禁煙もしなくてはなりません。
外科手術
外科手術は最終手段です。膵臓細胞が死滅した場合や疼痛が治らない場合にのみ施されます。
膵臓は一部分だけでも残っていれば機能しますので、外科的手術も視野に入れる事ができます。
膵炎になった状態ですと、他の臓器に悪影響や負担をかけます。しかし、外科手術をする事で他の臓器への悪影響や負担をおさえる事ができます。
でも、外科手術をしても膵臓が健康な状態に戻る事はありませんので、あくまでも最終手段にしかなりません。
5つの方法で膵臓をいたわるなら向き合っていける慢性膵炎
アルコールの乱用や多飲により、膵臓の細胞を崩壊させてしまう慢性膵炎は、健康な膵臓を取り戻せなくなる恐ろしい病気です。
発症させない様にするには、アルコールの飲み方に理性を働かせることです。
しかし、発症してしまったら、上述の5つの方法で向き合っていくしかありません。
制限がつくというのは本当にツライ事です。しかも、お酒が好きな人にとっては耐え難い苦痛に耐えなくてはなりません。
『アルコールをとるか?』『膵臓をいたわるか?』という二者択一に迫られる事になりますが、是非とも正しい判断をする事ができる様に向き合いましょう。
アルコールで崩壊しきった膵臓は、二度と戻ってこないのです。