胃潰瘍~多くの人が悩まされる胃の病気~
胃には『胃液』という酸性の強い液体が分泌されています。それは自分の胃でさえ溶かす程強力なものです。しかし、そうならないために『胃粘液』を分泌し胃壁を保護しています。
この胃液と胃粘液のバランスがとれている時は正常ですが、なんらかの原因で胃粘液が減ってしまうと胃液が胃を溶かし『胃潰瘍』を引き起こします。
少し古いデータになりますが、平成20年の胃潰瘍の罹患者数は43万5,000人という発表がありました。この数は本当に多いです。
平成8年から徐々に胃潰瘍罹患者数は減少傾向にあるのですが、1年間で43万5,000人の人が何らかの理由で胃潰瘍を発症させ、受診や入院をしているのです。
これ程多くの人が胃潰瘍になってしまうのはなぜでしょうか?
胃潰瘍を誘発する7つの理由
現代の生活において、胃潰瘍を根絶する事は正直難しいでしょう。
なぜでしょうか?以下の7つの理由があるからです。
ストレス
胃潰瘍と聞くと『ストレス』を連想する人が多いと思いますが、胃潰瘍とストレスは切っても切れない関係があります。
現代社会では、『仕事上の問題』『人間関係』『いらだち』『不安』『緊張』などストレスを感じる場面は多く存在しています。そのような環境下で生活をしていると、自律神経に乱れが生じ胃粘膜の血流が悪くなります。胃粘膜の機能が低下してしまうと、胃が胃液の酸に耐えられなくなり胃潰瘍になってしまうのです。
ストレスを感じやすい人は、運動・趣味に没頭する等して気分転換をする様にしましょう。
喫煙
煙草に含まれているニコチンは、毛細血管を縮小させ血流を著しく悪化させます。血流が悪くなると内臓機能が阻害され胃粘膜がただれます。それに加えて喫煙をすると、自律神経が興奮状態になり胃液を過剰に分泌させます。
胃液が胃壁を攻撃しやすい状況にしてしまうのです。
『血流の悪化』『胃粘膜のただれ』『胃液の過剰分泌』という状況を作りながら、胃潰瘍にならないわけがないのです。喫煙に全く良い事なんかないのです!
鎮痛剤の長期服用
薬を長期で服用していると胃に負担をかけてしまいます。特に、鎮痛剤(NSAID)の長期服用は胃潰瘍を誘発しかねません。鎮痛剤には痛みを抑える働きがありますが、副作用として胃の粘膜を荒らすという事があるのです。「胃が痛いから薬で緩和」と思って服用している鎮痛剤が、実際には痛みの原因を作ってしまっているのです。
刺激物の過剰摂取
刺激の強い食べ物(香辛料)を過度に摂取すると、胃は刺激され胃粘膜を傷めてしまいます。胃の粘膜が弱まると、酸性の強い胃液は胃壁をダイレクトに攻撃してしまいます。
辛いもの好きの方は、胃に負担をかけない様に気を付ける必要があるかも知れません。
暴飲暴食・早食い
暴飲暴食・早食いも刺激物の過剰摂取同様、胃に負担をかけ胃粘膜を傷つけます。美味しい物をいつまでも食べたい人は、暴飲暴食・早食いを直さなければなりません。
アルコールやコーヒーの過剰摂取
アルコールやコーヒーを過剰に摂取すると、消化するという働きが間に合わなくなり、胃にとっては大きな負担となります。それにより、胃粘膜が傷つき胃潰瘍へと発展してしまうのです。
ヘリコバクター・ピロリ菌の存在
ヘリコバクター・ピロリ菌は胃液の中でも生息できる菌です。それは、この菌が『ウレアーゼ』という酵素を産出し、それにより胃液内にある尿素を基にアンモニアを作り胃液を中和させているからです。しかし、この時作られるアンモニアは胃粘膜にとっては好ましくない要素です。アンモニアによって胃粘膜は傷ついてしまうからです。
さらにヘリコバクター・ピロリ菌は、胃の内部で有害な活性酸素や毒素を産出します。これらの有害物質も胃粘膜を傷つける為、胃潰瘍を誘発させてしまうのです。
近年の胃潰瘍患者の大多数は、ヘリコバクター・ピロリ菌が原因とされています。