「膵臓がん」が怖すぎて『がんの王様』と呼ばれている|内臓疾患ファイル

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2012年12月7日
「膵臓がん」が怖すぎて『がんの王様』と呼ばれている

転移の可能性があるがんは、出来れば早期発見して初期の内に切除して再発可能性を低くしていきたいものです。しかし、進行が速い上に発見が難しいがんだと手遅れになってしまう可能性が飛躍的に増します。「がんの王様」とも言われる膵臓がんについて解説していきます。

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見つかる頃にはもう手遅れ? 膵臓がんの恐怖

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がんは命に関わる可能性が大きい病気ですが、医療技術の発達によって早期発見出来て治療が間に合えば予後も良く再発しない可能性もある病気へとなってきています。
しかし、医療技術が発達する一方で、未だ術後生存率の向上や早期発見の精度向上が出来ていないガンも存在しています。
それが「がんの王様」とも言われる膵臓がんなのです。

膵臓がんはなぜ王様?

膵臓がんが「がんの王様」と呼ばれる理由は、がんの中でも厄介極まりないその性質にあります。

まず、病状の進行が速いということが理由の一つです。膵臓はたらこ程度の大きさしかないため、他の臓器で起こるがんよりも進行が速くなる傾向にあります。それに膵臓は活発に働く消化器官でもあるため細胞が元気なので、その分だけがん細胞化した時の進行速度も速くなってしまうのです。

第二に、膵臓がんは自覚症状が出にくいということが言えます。膵臓は肝臓と並んで病気の症状が出にくい「沈黙の臓器」で、がんが発生しても目立った症状がほとんど出ないのです。病状が進めば黄疸や体重減少といった自覚症状が現れてきますが、自覚症状が出る頃には多臓器への転移が確認されていることも少なくないのです。

そして、発見が困難ということも理由の一つです。他のがんは正常な細胞とがん細胞がはっきりと区分けされているように広がっていくのですが、膵臓がんの場合は正常な細胞の中に紛れるように広がっていく性質があるからです。そして膵臓が小さく、身体の奥にあるため細胞採取を行っての生検を行うことが非常に難しいのです。

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手術できても予後が悪い

がん治療の難しいところは、仮に手術が成功して腫瘍細胞を一粒残さず切除できたとしても予後が悪ければ治療せずにいた方が長生きできた可能性があるということです。

膵臓がんは、たとえ発見と治療が間に合ったとしても予後が良くないため、全病期での5年生存率は10~20%という低さになってしまうという特徴を備えています。

膵臓がんの治療は?

膵臓がんの場合、昔は外科手術で膵臓全摘出を行うのが一般的でしたが、膵臓を全摘するとインシュリンの分泌が行われなくなってしまうため、インシュリンの投与を行って血糖値のコントロールを行わなければならなくなります。
そのため、最近では腫瘍細胞がある部分だけを切除して可能な限り膵臓を温存する方法がとられるようになっていますが、再発の可能性があるのが難点です。

外科手術以外では抗がん剤による化学療法が有効です。膵臓がん治療ではゲムシタビンという抗がん剤と他の抗がん剤を併用していく手法が使われています。
放射線療法は化学療法との併用が有効と考えられていますが、化学療法単体の方が有効だったという研究報告もあるため、膵臓がんに対して放射線療法は有効ではないというのが支配的な見方といえます。

膵臓がんを早期発見するには

膵臓がんを早期発見するには、まず運が必要であるといえます。初期症状・自覚症状が見られないため、膵臓がんの早期発見は「偶然人間ドックに行ったら見つかった」とか「事故等で精密検査を受けることになったら偶然見つかった」というような運の良さでしか説明できないケースが多いのです。

偶然に頼らず膵臓がんを早期発見したいというのなら、がん検診を含めたフルコースの精密検査を定期的に受診することが大事です。見つけにくいのなら探す機会を増やすしかないのです。

著者:海老田雄三

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芸能、アニメ、ゲーム、音楽あたりが得意分野のはずが、気が付けばなんでも書くライターになっていました。アニメ、ゲームなどのサブカル誌によく寄稿しています。